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種類が多いのに、ちゃんと1ブランドにまとまるハミガキパッケージの謎

ハミガキの機能の主流はトータルケア(歯周病予防)

ひと昔前、「口腔ケア」といえばイメージするのはシンプルに「虫歯予防」だけでしたが、口臭予防、歯をより白くしたい…など様々なニーズに対応する商品が生まれ、最近では「歯周病」についても広く知られるようになりました。現在日本で売られているハミガキは、「歯だけでなく口腔環境を整えるトータルケア」が主流になってきています。
次いで商品数、人気共に高いのは美白(ホワイトニング)です。
また、歯槽膿漏ケア商品も大手メーカーは各社リリースしています。主にシニア向けと言っても過言ではありませんが、それぞれの年代から歯茎ケアに対する関心が高まっているということでしょう。

トータルケアから枝分かれするオプション機能

主軸となる機能に「〇〇プラス」などとした追加機能をつけてバリエーションの幅を広げているブランドが多くあります。こういったオプション機能のトレンドは美白(ホワイトニング)、知覚過敏です。
美白(ホワイトニング)は主軸機能としてもオプション機能としても人気が高いようです。
他には口臭予防、無研磨、爽快タイプ…といったオプションもあります。
オプション機能ではなくフレーバーのバリエーション展開があるブランドもあり、ハミガキというカテゴリの中だけで複雑に枝分かれしていることがわかります。

歯周病予防ハミガキのデザイン傾向

主軸機能が「歯周病予防」のハミガキについて見てみましょう。「殺菌力」「抗炎症」といった作用を効果的に伝えるため、メディカルイメージの高いデザインが多く見られます。商品名のタイポグラフィーは太くしっかりとしており、薬のパッケージでよく見るようなイメージの書体です。
ライオン「システマ」、サンスター「G・U・M」はバリエーションに展開してもロゴイメージを固定させるためにメインカラーと特徴的なフォルムのフレームを設けています。その点、第一三共ヘルスケア「クリーンデンタル」はオプション機能によってメインカラーを大胆に変えていますが、メインカラーエリアを同じフォルムのフレームで囲うことで統一感は損なわれていません。
この3大ブランドに共通して言えることは、


・ロゴが力強い
・ロゴの周囲に特徴的なフォルムのフレームを設けている
・主軸機能をショルダーに配置している


このような特徴があります。

歯槽膿漏予防ハミガキのデザイン傾向

同じく歯茎ケアでありながらシニア向けとなると、様相が変わってきます。
小林製薬「生葉」、サンスター「当帰の力」は漢方薬イメージを全面的に押し出しています。一方、ライオン「デントヘルス」はワイヤーフレームイメージを使い、先進技術感を出しています。花王「ディープクリーン」は漢方成分ではありませんが、茶カテキンを配合しているため漢方と化学の中間的イメージを狙っているように見えます。
従来の歯槽膿漏ケアといえば、「塩で引き締める」のが一般的でしたが、小林製薬が示した新機軸「天然由来成分を配合したハミガキ」がこのカテゴリに新風を巻き起こしました。現在はそのブームが少し落ち着き、天然成分以外のアプローチを各社模索し始めた印象です。
このアプローチの違いでデザイン傾向が大きく違うのがこのカテゴリの面白いところですが、各ブランドの訴求ポイントがロゴ書体や色調などのデザインでしっかりと表現されています。

美白(ホワイトニング)ハミガキのデザイン傾向

1995年、「芸能人は歯が命」というCMで一世を風靡した「アパガード」。当時はCMの面白さで爆発的に売れた印象がありますが、現代の口腔ケアが歯茎への意識に集中していく中、見た目の美しさを重視するユーザー層も根強く存在しており、若年層の関心も高いようです。「白さ」を追求するこのカテゴリは美容的側面が強く見えます。ピックアップしてみると基礎化粧品や洗顔フォームのパッケージを見ているような印象です。ロゴやデザインエレメントを小さめに置き、余白を多く取って上品な仕上がりにしています。「TO BE WHITE」に関しては、ダイヤモンドカットと歯を掛け合わせたようなシンボルマークを押し出し、他のブランドとは少し違い若年層向けコスメのような元気なデザインになっています。
どちらのデザインをとっても、コスメを買うような感覚で「少し高くても買おうかな」と思えるような上質感を醸し出しています。

ネーミングとデザインで異彩を放つ小林製薬

メディカル、化粧品といったハミガキデザインのトレンドから離れたところで存在感を醸し出す小林製薬の商品について見てみましょう。
代表的商品「生葉」はハミガキに漢方イメージを持ち込んだパイオニア的存在です。商品名も成分をそのままネーミングにしたインパクトがあります。「スミガキ」についても同じ考え方で、斬新な発想で開発された商品そのものを伝えるネーミングやベネフィットコピーを大切にするビジュアルになっており、余計なエレメントはほとんど置かれていません。
「トマリナ」「シコンコート」は機能がネーミングになっており、機能のメカニズム図が加えられただけのシンプルな構造です。薬用ハンドクリームのような印象で、少しレトロなビジュアルが昔から売られているような信頼感を感じさせます。

トータルケアのようなセールスポイントが1つではないカテゴリに属するブランドは、特にタイポロゴ開発に力を入れており、機能バリエーション展開の際、カラーバリエーションやデザインエレメントを追加してもブレないインパクトと、時代に左右されない強さを重視して作られています。
一方、際立った1機能が柱となっているブランドは、その機能をより効果的に視覚化するためにデザインエレメントやメカニズム図などを駆使し、ロゴを含めた総合力で世界観を作り出している傾向があります。

まだ見ぬ新商品がどのカテゴリから登場するのか、また新カテゴリを構築するのか、それらがこのデザイン法則に乗っ取ったものになっているかという目線で見てみるのも楽しいかもしれません。

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