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語ってこられなかった、通訳を通してのプレゼンのコツ。

グランドデザインでは年間で、多くのプレゼンテーションを日本~中国間で行っています。その中でも私が12年間で通訳兼プレゼンターとして参加したプレゼンは概算でも100回を超えていて、今ではクライアントから「あなたの通訳は分かりやすい」と褒めていただくことが増えました。でもこれは私の日本語が上手だからではありません。私は日本の文化が好きで中国の文化とのギャップをよく知っていますから、通訳するときには、そのギャップを埋めようと工夫しているからに過ぎません。今日は通訳を通してプレゼンする機会の多い日本人に、話し方のコツをお伝えしたいと思います。

【パターン1】
謙虚な気持ちで、日本式の会社紹介をすると
なにもない会社だなぁと思われ、クライアントはイライラし始めるかも

例えば:

G:初めまして、グランドデザイン◯◯です。
  2008年設立し、邱永漢グループから共同出資を受けて、
  今は、30人の社員を有しています…

今の話をそのままに通訳すると、クライアントはこう思うかも~:

C:うん、邱永漢さんってどんな方ですか?凄い人ですか?
  えー、30人って、小規模ですね、、、大した会社ではない
  みたいだなぁ…

そうです!中国のクライアントは、会社紹介時に関心を持っているところは、『この会社が「凄い」かどうか』、そして、どこが凄いかというところにあります。でも、日本人の考え方は、「なにもない、だからある」というような美意識を持っているので、あんまり自分の会社が凄いということを自己PRしませんね。だからそのまま通訳されると、何もない会社、ということになります。

@日本人プレゼンター
自社紹介をエレベータートークだと思ってください。自社しかできないポイントを自己PRすることは、強いパートナーと一緒にやりたいと思うクライアントに、凄そうな会社なのだ!という第一印象を与えることが、始まりでは大事になります。

【パターン2】
日本語で30秒以上続けて話すと、クライアントがボーッとしはじめ、
イライラし始めるかも

そうです。これは、私がよく目にするパターンです。日本人プレゼンターは一生懸命になるほど、相手が日本語を分からないことを忘れ、自分が話したいことをどんどん話して、なかなか通訳させてくれません。そんな時、私は、笑顔でプレゼンターに向かい、 「はい!」と合図をしてから、日本語を一旦止めさせて、中国語通訳し始めます。

@日本人プレゼンター
自分はコンサートの指揮者だと思ってください。プレゼンのリズムを作るのはあなたです。演奏は中国語の通訳さんに任せた方が、素晴らしい演出になるでしょう。

【パターン3】
現状→分析→課題→ソリューション
このプレゼン順番で伝えると、クライアントがイライラし始めるかも

例えば:

G:フランス高級ブランドの鍋が日本市場に進出。

「現状」日本市場には、何千円ぐらいする鍋でも、そこそこ機能よくて売れている…
「分析」このフランス高級鍋の強は、可愛いだけではない。実は熱伝導率や保温性が高い非常に高いこと。弱みは、ブランド知名度がないこと。さらに値段は3万円もする高い鍋…
「課題」知名度0、そして6倍ぐらい高い値段しているフランスの高級鍋を、日本でどう売るか…
「ソリューション」他にない「かわいさ」で選ばれ「機能」で惚れ直す体験が良いと判断し、3年間の雑誌広告のみでF1層の認知を75%にまで上がりました…

現場を想像してみてください。「現状」の日本語してから、中国語訳する、また「分析」の日本語してから、中国語訳する、すると、クライアントの最大の関心事ーー「どんな課題を抱えているか」&「どういう成果をあげたか」ーーにたどり着くのは10分後です。クライアントの好奇心はそんなに長く持ち堪えてくれません。

@日本人プレゼンター
自分はコンサートの指揮者だと思ってください。プレゼンのリズムを作るのはあなたです。演奏は中国語の通訳さんに任せた方が、素晴らしい演出になるでしょう。

【パターン4】
日本人しか分からない言葉を、もし訳させたとしても、
クライアントはそのニュアンスを理解できず、イライラし始めるかも

例えば:

Grand:旗艦店宣伝用のビジュアル。この定番カット以外に『ムード』がある写真もオススメです

Cliant : うん~、、、以上の写真には『ムード』はないですか?

こういう時、「ムード」に当たる中国語・その類似語を一生懸命伝えても、伝わりにくいと思います。日本人しか分からない『ムード』の参考例を補佐として見せたほうが効率的だと思います。

@日本人プレゼンター
中国クライアントはいつも効率の高いコミュニケーションを求めています。抽象的な言葉で伝わらない場合には、具体的に共感できるコミュケーションツールを使った方が役立ちます。

【パターン5】
日本人プレゼンターが肝心な部分を言い忘れた場合、
そのまま訳すと、クライアントがおかしいと思い、イライラし始めるかも

これも実際よくあるケースです。プレゼンのとき、途中で中国語を挟むと、日本語の文脈に影響を及ぼすことがあります。日本人プレゼンターが通訳が話し終えるのを待っている間、時々どこまで話したかを忘れる人が結構います。去年の11月に、クライアント側で中国語がわかる日本人リーダーと中国側のリーダーが参加されてた大きいプレゼンの通訳を担当しました。プレゼン中、私は日本人プレゼンターが肝心な部分言い忘れたことに気づき、通訳時にその部分を付け足して中国語で伝えました。プレゼン後、クライアントの日本人リーダーから褒められ、嬉しかったのを覚えています。(気付いてくれる人がいたんだ!)

これは私が気づいた大きな問題で、2つの言葉でプレゼンする時、プレゼンの完成度はどうしても下がりがちだということです。日本語プレゼンか、中国語プレゼンか、どっちをメインにしないと、どっちも中途半端になってしまいます。私はクライアントが中国語しか分からない中国クライアントであるならば、中国語主役のプレゼンにしたほうがいいと思います。

@日本人プレゼンター

POINT-1 日本語プレゼンの内容の粗筋を抽出し、見出しを覚える。 具体的な内容を忘れても、見出しさえ覚えれば、プレゼン脈絡の完成度に影響しない。

POINT-2 本番プレゼンの前に、まず、通訳さんにプレゼンする。 日本語の企画書をただ通訳さんに投げて翻訳させることにしないほうがいい。その前に、口頭で、中国クライアントにプレゼンするように、通訳さんに日本語の企画の意図、話すポイントを全部説明して、もし、通訳さんに分からない部分があったら、その部分は当然、中国クライアントに伝わりません。

POINT-3 日本語主役というより、中国語主役のプレゼンとしてリハーサルする。 まず、日本語のプレゼンの内容は、通訳さんが完全に理解できることが大事。 完全理解というのは、①もしプレゼンの内容が抜けたら、その場すぐ分かって、すぐ中国語で補完できること。②万が一、日本人プレゼンター飛行機の遅延などて間に合わない場合でも、中国語でその日本語の企画をプレゼンできるというレベルを達成したら、絶対間違いありません。 そして、中国語プレゼンとしても成り立たせること。 通訳後の中国語プレゼンにも、起承転結といった話すテクニックも意識して、ちゃんと上の内容と下の内容を繋がらせることで、中国語プレゼンとしても成り立たせること。

POINT-4 決められたプレゼンの時間内で、日本語と中国語の比率を事前に決める。 一段ごとに、日本語は15s〜30sで、中国語は30s〜1分間ぐらいに、1:2にしたほうがいいと私は思っています。日本語のポイントだけで伝えてもらい、中国語は、日本語で伝わっていない背景も含めて中国語で伝える。そのためにPOINT-3をちゃんと掴めることが、大事だと思います。

【まとめ】

以上、大した経験談ではないですが、長年中日プレゼンの通訳を担当していた様々な体験からの心得です。何かのお役に立てば幸いに存じます。これからも、中国語通訳だけではなくて、日本語プレゼンをよりよく伝えるために、中国語プレゼンターとしても頑張っていきます。

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