|1|非営利組織の課題=限られた予算。どう乗り越えるか?
JICAは非営利機関であるため、広告予算に大きな余裕がない。CM制作において一般的な手法(著名人起用、海外ロケ、高品質VFXなど)を使うことは難しい。その制約を逆手に取り、企画の軸を「人と手で描く」=ホワイトボードアートで伝えるビジュアル戦略に定めた。これにより、低コストながらも温かみと手ざわりのある演出が実現された。
|2|“支援の実績”をビジュアルで表現する方法
企画の中心には、「モノクロからカラーへ」という変化の視覚的比喩が置かれた。
・ 水資源問題
・ 母子保健問題
・ 国際緊急援助
・ ジェンダー平等
この4つの代表的課題について、JICAの支援によって変化していく様子をモノクロ→カラーで描写。Before=白黒で描かれた困窮の現場、After=支援により彩られる未来。この表現により、JICAの活動は「遠い世界の話」ではなく、目に見える“変化”として認識できるものとなった。
|3|“知らない”若者に、どう出会ってもらうか?
今回のコアターゲットは、JICAを「知らない」10~20代の若者。彼らに届く媒体として、
・ Instagram・Twitter・YouTube等のSNS
・ ショートバージョン動画による情報分割
・ 拡散性を狙った親しみやすいハッシュタグ活用
といった、プラットフォームに合わせたマルチデバイス設計を採用。若者が日常的に使っている場所に「さりげなく、だけど印象的に」登場する工夫がなされた。
|4|“つくる過程”自体を教育に変える
このプロジェクトでは、ただ動画を作るだけでなく、コンテンツ制作そのものを「国際協力への参加」に変える設計が取られた。美大生57名によるホワイトボードアートの手描き制作。
合計8日間にわたり行われたこの作業は、若者自身がJICAの活動を知り、可視化するプロセスでもあった。ここには、「参加者自身がJICAの伝え手になる」という構造が組み込まれていた。
|5|短期の“認知”から、長期の“興味と行動〟へ
本プロジェクトの短期的目標は、JICAとその活動への認知向上。SNSでの動画再生回数は累計3万回以上、そこからのフォロワー増加やシェアなど、着実な反応が得られた。
しかし、それ以上に重要だったのは、「将来、国際協力に関わってみたい」という関心を持つ若者を少しでも増やすこと。この動画を起点に、JICAのボランティア制度や、開発協力キャリアへの興味が芽生えれば、広告は啓蒙以上の意味を持つ。