Overview
2020年の東京オリンピックを前に、訪日観光客向けホテルの内装とロゴデザインを設計会社STARより依頼された本プロジェクト。私たちは「一晩で日本を体験する空間」を提案。江戸文様の廊下、風神雷神図の浴室、和紙照明など、日本文化の断片をコラージュ的に配置し、非日常的な“日本体験”を演出した。マークも椿と桜を幾何学的に再構成し、“日本文化の入り口”を象徴するシンボルに。伝統の再現ではなく、訪日客に文化への興味を促す“入り口”としてのホテルを目指した提案である。
2020年東京オリンピックを目前に控え、訪日観光客の急増が予測されるなか、設計会社STARから届いたのは、インバウンド向けホテルの内装デザイン依頼だった。私たちはこの機会に、単なる和風インテリアではなく、「一晩で日本を体験できる空間をつくろう」という提案を行った。
これは、“正確な日本文化”の再現ではなく、訪日客にとって印象深い“日本らしさ”の編集。文化の断片を丁寧に編み合わせた、異文化交流の入り口としての空間デザインの構想だった。
海外の日本食レストランや土産店に見られる「なんちゃって和風」は、日本人から見るとしばしば“違和感”を伴う。
・ 提灯が室内に吊られていたり
・ 瓦が壁に貼られていたり
・ 暖簾がホテルの玄関についていたり
だが、そうしたズレにこそ、異文化による新しい意味づけが生まれていることも事実だ。私たちは、これを「勘違い」と切り捨てず、むしろ肯定的に読み替える視点を提案した。
私たちの提案は、「空間全体を使って、日本文化を体験させる」という構成。そのために、ロビーから廊下、各客室にいたるまでを文化の断片で構成されたコラージュ空間とした。
廊下:江戸着物の文様
客室:風呂場の壁面に風神雷神図
天井:格子模様の漆塗り風パターン
家具:屏風や和紙照明の現代的アレンジ
それぞれが本来の意味とは異なる文脈で配置されていながらも、非日常としての“日本体験”を生む仕掛けとなっている。
ロゴデザインにおいても、「日本文化の複層性」を意識した。扇や波といったモチーフを抽象的かつ幾何学的に再構成し、“日本の入り口としてのホテル”を象徴するマークを制作。海外の旅行者にとっても視認しやすく、かつ日本的な美意識をまとった普遍的デザインを目指した。
このプロジェクトで大切にしたのは、「文化の正しさを教える」のではなく、「文化に興味を持ってもらう」こと。ホテルは、異文化と出会う最初の場であり、すべての訪問者に完璧な知識を届ける必要はない。必要なのは、空間に触れることで
・「あれは何?」と興味を抱き
・ 自ら文化を探求したくなるような設計
つまり、“入り口”として機能することが、文化体験型ホテルの役割だと考えた。
“日本らしさ”を再現するのではなく、新しい視点で編集しなおすこと。私たちが提案した「一晩で体験する日本」という構想は、断片をコラージュし、物語を紡ぎ、記憶に残る異文化体験を創ることを目的とした。それは、正統な伝統の再現ではなく、海外からの目線を含んだ、新たな“日本の演出”である。文化と文化が触れ合う空間にふさわしい、柔らかく開かれた“日本のかたち”を目指した、私たちの提案です。
Date | 2017 |
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Industry | Retail |
Location | Japan |
Grand design
STAR
sola design studio