Projects

Overview

ツインバードはメッキ加工業として創業し、その後自社製品・ギフト商品の開発へ乗り出した新潟燕三条に本社を持つ家電メーカーである。ツインバードは時代の変化にあわせながらも一貫したものづくりを行ってきており、自社開発のFPSC(フリーピストン・スターリングクーラー)技術は国際宇宙ステーションでも使われ、今回のコロナ禍では医薬品の運搬などにも採用されるなど世界に誇る技術を持つ。彼らは自分たちのもつ技術によって開発した美容商品を、中国市場に向けて発信していきたいと考えていた。

Creative idea

“流行”よりも“本質”を伝える美容ブランドの挑戦
ツインバードは、世界に誇る技術とものづくりの精神を持つ新潟・燕三条の家電メーカーである。創業はメッキ加工業。現在では、自社製品・ギフト・美容機器・冷却技術(FPSC)など多岐にわたる製品を開発し、その一部は国際宇宙ステーションや医薬品輸送にも採用される世界レベルの技術力を誇る。

彼らはこの確かな技術で開発した美容機器を中国市場へ展開したいと考えていたが、そこにはひとつの課題があった。それは——中国の美容市場は、韓国式のスピーディで映える“変化の美”に傾いており、日本的な“育む美”とは価値観が異なるという現実だった。

私たちは考えた。流行を追うのではなく、流行の奥にある「本質的な美意識」に語りかけることこそ、ツインバードが選ぶべき道なのではないかと。

|1| 燕三条という土地が育んだ「誠実な美」

ツインバードの拠点・燕三条は、世界でも知られるものづくりの聖地である。澄んだ水と厳しい冬が育てた自然、手のひらで光を反射するような金属の研磨技術、道具に宿る品格。そこには“時間をかけて整える”という日本的な美意識が根づいている。その土地で育まれた製品には、単なる効能や機能以上に、「背景」と「思想」が宿っている。つまり、ツインバードの美容商品は、“美しい土地の哲学”をまとったプロダクトなのである。

|2| 中国美容市場における“価値観のズレ”

かつて中国市場は、日本式スキンケアやナチュラル志向のエステが人気だった。しかし今、トレンドは大きく変化し、韓国発の医療エステやプチ整形、即効性重視の美容法が主流になっている。一見、こうしたトレンドに合わせて技術訴求や効果演出を派手にすべきにも思えるが、その波に乗ることはツインバードの本質を薄めるリスクにもなり得る。ここで私たちは明確な判断を下した。「短期的な消費トレンドではなく、長期的な美意識に訴えるブランドをつくる」という選択である。

|3| “流行”より“美の生まれる場所”を語る──ブランドストーリーの設計

私たちは、製品そのものの効果やスペックを前面に出すのではなく、燕三条という土地に宿る精神性と、日本的な美意識を軸にした物語を構築した。
コンセプトは:

「美しい場所には、美の本質が宿る」

その言葉の通り、ツインバードの製品がどのような思想で、どんな場所で、どんな手によってつくられているのかを、土地の風景と職人の所作を通じて可視化する映像とプロモーションツールを企画。製品紹介ではなく、“自己紹介”としてのブランドムービーを構築することで、商品と共に価値観ごと届ける戦略をとった。

|4| ブランドムービーとプロモーションツールの構成

制作されたブランドムービーでは、

・雪深い燕三条の風景
・工房で製品を磨く手の動き
・静謐な水の流れと光の反射
・商品に込められた思想と設計の哲学

これらを詩的なリズムで構成し、映像と言葉の両面から「静かで、芯のある美しさ」を訴求した。同時に、中国語で展開されるプロモーションツールには、土地と哲学に基づくストーリーテリングを重視し、商品の機能だけではなく、選ばれる理由を情緒的に伝える表現を設計した。

|5| 技術ではなく、「美しさに宿る意味」で勝負する

FPSC技術、国際採用実績、衛生や冷却の工学的裏付け。ツインバードは間違いなく“技術で戦える会社”である。
しかしその強さに頼ることなく、「この美しさには意味がある」という物語性で戦う」という選択をしたことが、
 
・流行に左右されにくい
・長期的なブランド資産を築ける
・“共感”でつながるコミュニティを育てられる

といった、ブランド構築において決定的な差を生んだ。

About

Date 2020
Industry Retail
Location Global

Information

Grand design

Katsunori Nishi
Creative Director
Jun Fujiwara
Creative Director
Junpei Kudo
Art Director
Kelvin Chen
Graphic Designer