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Overview

スポーツケアブランド「プロ・フィッツ」は立ち上げ当初、明確なブランド方針がなく、担当者以外は「らしさ」を言語化できない状態だった。そこで、思想・運用両面からのガイドラインを策定。単なるルール集ではなく、VISION・MISSION・VALUE・PURPOSEを明文化し、全メンバーがブランドを語れる共通土台を構築した。営業や制作パートナーも活用しやすい仕様とし、デザインの一貫性と組織全体でのブランド理解を両立。ブランドの成長に向けた“戦略的設計図”として機能している。

Creative idea

「ブランドはある。でも、みんなが見ている方向が違っていた」

ピップの新たなスポーツケア総合ブランド「プロ・フィッツ」は、機能性や品質に優れた商品を提供しながらも、立ち上げ当初はブランドとしての“方向性”が明文化されていない状態にあった。

・ 誰もが違う“らしさ”を語る
・ デザインのトーンに一貫性がない
・ インハウスや外注先で解釈が分かれ、統一感を欠く
・「いったい、プロ・フィッツとはどんなブランドなのか?」

この根本的な問いに答えられるのは、担当者数名だけ。このままでは、ブランドが“商品名”にとどまり、“思想のない見た目だけの存在”になってしまう——そこで始まったのが、本ガイドライン制定プロジェクトだった。

|1| 混在する“解釈”に秩序を与えるために

「プロ・フィッツ」は誕生したばかりのブランドであり、まだ“運用のルール”がなかった。ゆえに、現場ではそれぞれが「良かれと思う」表現を行い、ビジュアルやメッセージにブレが生じていた。この問題を解決するには、
ブランドの中核となる“思想”を明文化し、誰もが参照できる「共通言語」をつくることが必要だった。

|2| ガイドラインは「まとめ」ではなく「設計図」

一般的に、ブランドガイドラインはデザイン運用のマニュアルとして捉えられがちだ。しかし私たちはそれを「これからブランドをどう育てていくかを示す“戦略的設計図”」として捉え直した。まずは国内外の優れたブランドガイドラインを比較・分解し、プロ・フィッツにとって本当に必要な要素だけを抽出・再構成。その上で、消費財としての特性に合わせて、企業ブランディングのルールを商品ブランドに転用した。

|3| VISION・MISSION・VALUE・PURPOSEの言語化

最も重要だったのは、「プロ・フィッツというブランドは何のためにあるのか」を明らかにすること。

・ VISION(どんな未来を目指すか)
・ MISSION(日々どう行動するか)
・ VALUE(大切にする価値観)
・ PURPOSE(存在意義)

この4軸を徹底的に掘り下げ、プロ・フィッツの“顔”を正面から描き出した。「機能性の高さ」や「アスリート視点」など、商品ごとの強みを越えて、ブランド全体としての一貫した意志が示された。

|4| 誰でも使える、だから活きる──運用設計の工夫

デザイナーだけではなく、営業や販促、制作外注パートナーもガイドラインの利用者である。だからこそ、以下のような実用性を重視した仕様とした:

・ ロゴのクリアスペース、最小使用サイズ
・ 使用可能な色、グラデーションルール
・ 書体指定(Web/紙)
・ パワーポイントテンプレートやスライドレイアウトの基本ルール

これにより、「誰もが迷わず、ブランドの一部としてふるまえる環境」が整えられた。

|5| ブランドの“正面”を、みんなで共有する文化へ

ガイドラインは、単に“正しいデザイン”を定めるツールではない。ブランドを語り合い、磨き、共に育てていくための“共通土台”である。プロ・フィッツのガイドライン制定は、担当者以外のメンバーが「自分の言葉でブランドを語れる」ようになるきっかけを生んだ。それは、これから商品が広がっていく中で、どのチャネルでもブレずにブランド体験を届けるための礎である。

| まとめ | ブランドは「思想 × 運用」で育つ

プロ・フィッツのガイドラインプロジェクトは、“立ち上げたブランドを育てるための、思想と言語とルールのデザイン”であった。今後、ブランドが広がるほどに、“ガイドラインに魂が宿っているか”が試される。このドキュメントは、単なる指示書ではなく、ブランドの未来を共有する“誓約”でもある。

About

Date 2021
Industry Retail
Location Japan

Information

Grand design

Katsunori Nishi
Creative Director
Ryota Ichikawa
Art Director / Designer