Overview
LINEスタンプと似て非なる、中国SNS・微信のステッカー。日本人の新人デザイナーが中国人メンバーと協力して制作しました!
日本でチャットアプリと言えばLINEですが、中国では微信(WeChat)が主に使われています。その月間アクティブユーザー数は、なんと12億人。LINEは約8,400万人なので、まさに桁が違います。
LINEでスタンプを誰でも作れるように、微信でもオリジナルのステッカーを配信することができます。LINEのクリエイターズスタンプは50〜100円で販売していることが多いですが、微信ステッカーの大半は無料配信です。販売もできますが、無料のものがほとんどだそうです。
またステッカーは、まとまった数を作らなくても構いません。クリエイター登録をして面倒な手続きも踏まなくても、ひとつずつ自分のアカウントに登録することができます。弊社では空き時間に作ったステッカーで、チャットが賑わうこともしばしば。
GRAND DESIGNでは、常に結果やクオリティを求められるクライアントコミッションとは別に、ラボ兼ファクトリー企画の一環として、若手社員たちにデザインやコミュニケーションを楽しく実践しながら学ぶ機会を提供することに取り組んでいます。デザイナーやディレクターキャリアの中で大切なプロセスへの理解を深め、クリエイティブの未知なる可能性を探る、自社プロジェクトですが、実践を通じて様々な事柄を感じとり今後のデザイナーとしてのキャリアやクライアントコミッションに活かしてもらう狙いもあります。
弊社は上海にもオフィスがあるため微信とWeiboの運営もしており、それに伴い微信ステッカー制作の話が持ち上がりました。
先述の通り身内ですぐに使える微信ステッカーですが、それでは多くの人に届きません。弊社は微信の企業アカウントを既に取得していたこともあり、ステッカープラットフォームに申請することになりました。
キャラクターデザインとステッカーの制作は新人デザイナー・亀田の担当です。モチーフは中国らしいパンダと黄色い蝶(会社のマーク)にしました。中国のSNSなのに「中国らしい」というのも変ですが、日本でも会社の広報物になるし、単純に可愛いのでパンダをチョイスしました。
ステッカーの数は、配信されている多くのステッカーに倣い24個としました。また微信ではアニメーションがついたステッカーが多用されています。…つまり24個のGIFアニメの制作が今回のノルマです。結構なボリュームですね。
やることが決まればあとは作るのみ!
通常業務の傍ら、およそ2ヶ月かけて24個のGIFアニメを制作しました。
ステッカーのGIFデータを作って終わりではありません。プラットフォームに登録するには細かいデータ準備が必要です。
しかし中国語が読めないと登録要項はさっぱり…。そこで中国出身の東京メンバーや上海の社員に協力してもらい、事務手続きを済ませることができました。要項には「申請には最大10営業日かかる」とありましたが、2〜3日で申請が通りました。早い!
LINEスタンプと異なり、微信ではそれぞれにキャプションが必要です。ステッカーダウンロードページの説明文と併せて、中国人コピーライターの李と黄が開発しました。
そして何より、キャラクターには名前と設定が必須!はじめはG”RAN”D DESIGNの「ランラン」と命名していましたが、大福のような風貌と縁起の良さから「大福(da-fu)」に決まりました。
今後は第2弾として、よりディープな中国語表現や春節など季節の挨拶などを拡充することも検討しています。さらに、SNSでの様々な投稿デザインに出没したり、日本でもより多くの方々に使ってもらえるようにLINEステッカーとして登録させたり、グッズに展開させたり、はたまた有名キャラクターとコラボさせちゃったり、、妄想は尽きません。
『熊猫大福』は2020年11月より配布がスタートし、1ヶ月でおよそ1,000件のダウンロードが記録されています。もしこの記事を読んで頂いている方で、微信ユーザーでいましたら、是非『熊猫大福』で検索&ダウンロードして使ってみてください!
当時の僕がこの考え方や作り方を知っていたら、先輩から(この部分で)怒られることはなかったかもしれません。経験上、何度も指摘されたポイントなので、もし同じような経験に心当たりがあれば、是非この考えや型を試してみて欲しいです。何か違う結果が期待できるかもしれません。上記の本にもしご興味があれば、Amazon、Rakuten、古本屋等でお求めください。
ここまでの2つの意識で、あなたのスライドはシンプル伝わる、独自の思考に溢れたものになるかもしれません。
さらに質問です。
その資料は誰に向けられたものなのか?そして誰に何をして欲しいのか?
この問いもまた、何度も何度も指摘され、未だ習得できていないポイントです。業務上、提案が点数で評価されることが何度もあります。そして、長年を共にした先輩の提案書は、常々高得点を叩き出すものでした。自分の資料と何が異なるのか?ここでは(細かく説明することは出来かねるので)内容はさておき、そもそもの視点について、2点書きたいと思います。
1つ目の視点は、状況を好転させる『一つ飛ばし』のパス(昔からサッカーをしていたので、自分なりに解釈ですみません)。少し話が飛びますが、説明します。
上記はよくあるサッカーの1シーンです。左から右にパスが出るのですが、1は状況に変化が見られません。逆に2は前方にスペースが空いたため、状況が好転しています。何が言いたいかというと、常々先輩はその資料が届くであろう次の人たちに目を向けていました。つまり、担当者の奥にいる人たち。時にそれは別の担当者であり、はたまた責任者であり、さらには経営層であり…。何を資料にすべきなのか、何に対する提案が必要なのか、を奥の目線から考えることでその資料の価値、内容を向上させていたのかもしれません。担当者に向けた資料も、担当者から責任者に渡り、都度解釈され、調整されていくのですから、予見を踏まえた資料は承認されやすいのかもしれません。
2つ目は、Point 1に近い内容ですが『筋を通す』ということ。1→2、2→3、3→4、丁寧に点を線で結び、首尾一貫することです。なので、僕の先輩の資料はこれでもかというほど綿密。ページもののデザインは過去何度もやっていますが、その校正のように厳格でした。軽率に説明のない単語は使わない、誤認される可能性のある表現は避ける、同一の意味で扱う言葉は統一する、などなど意識するポイントは複数あります。そして、それが出来てくると究極人が説明しなくても分かる資料が出来上がるのです。事実、その資料たちが高得点を叩き出すシーンをいつも見てきました。いつだって理想は、口頭説明しなくても伝わるものなのかもしれません。資料は必然に一人歩きするものですから。
ここまでで、思考と配慮に富んだ資料1枚1枚を作る準備が出来上がっているはずです。ただし、資料をチームで作ったり、多くの内容が含まれるものを作りきるにはまだ大事なことが『抜けて』います。
最後の質問です。
資料の作成中、抜け漏れはないだろうか?と考えたことはありますか?
そもそもスケルトンを作ってからページ作成に入るからそんなことはない、でしょうか?
とはいえ、実際資料を作り始めるとそのページ1枚1枚にどうしても目が行きがち。全体が見えなくなってきて、気づいた時には時間が足りないだの、まとまってないだの、結論がブレブレなど、そんな状況になったことあると思います。実際、資料を作ったのは良いけど、構成から再修正なんてことは僕にもよくありました。ページの並び替えならまだしも、結論までズレてくるともう悲惨な状況です。そんなことにならないように、ページ作成に行く前にすり合わせた方が良い訳ですが、ある時から自分は先輩と資料を共に作る中で迷わなくなりました。それは長年共同していることでの経験や時間が作用していたこともあるのですが、2つの理由があったと思います。
1つ目は、互いの脳がシンクロする部分が増えたこと。この説明は今回のトピックとは異なるので説明しませんが、こちらの本に詳細が書いてあります。とても勉強になる本なので、ご興味があれば是非ご一読ください。
・参謀の思考法――トップに信頼されるプロフェッショナルの条件(著者:荒川詔四)
https://www.amazon.co.jp/参謀の思考法
2つ目は、共有できる型を使うこと。Chapter 2で紹介した本に記載があるように、資料全体の作成にもある程度の型があると思います。Laboratory 05で語っている分析→課題→ソリューションも鉄板かもしれませんし、僕自身アメリカオクラホマで学んだResearch Paperの書き方は、Introduction→Thesis Statement→Body (Proof)→Conclusionです。少し脱線しますが、奇しくも日本語の文体、英語の文体、それぞれに類似性が見られます。日本語の文体は、主語(S)から始まり述語(V)で終わる都合、最後まで聞かないと結論がわかりません。英語の文体は、Sの後にすぐVが来ます。よって、YES・NOの結論がより早くわかります。言葉の作りが英語に近い『中国語』を使う場合、結論を急ぐというのはもしかしたら必然なのかもしれません。
型の話に戻ります。上記2つの型は共に鉄板としても、共通項は『主張』と『保証・証拠』になるので順序がどうであれ、必要な内容は一致しています。もちろん、主張をする上で、論拠は強く、深いものでなければなりません。従って、複数の視点になります。一般的によく言われることでもあり、僕も先輩から何度言われたか分かりません。対象は、いつも同じ面を見せる月ではなく、より多角的に見ないと『見えない』と。右から見ればキレイなものも、左からみればそうでないモノあるでしょう。一方から見れば正義も、他方から見れば悪かもしれません。
そしてここまで来ると本当に先人たちの知性・知恵・合理性に感服してしまうのですが、経験上よく触れた資料には、この型にマーケティングの知見が絡みます。いわゆる3Cと言われるものです。つまりどういうことかと言うと、下記のようなイメージになります。
複数かつ必要な視点から論拠を探る視点が加わります。PEST分析と合わさって5Cと言われる場合もあるようですが、僕自身、先輩と共同する中でこの型を理解・共有できるようになったタイミングから資料作りに迷わなくなりました。何が足りない、何が欲しい、最小限の確認で資料を作ることができるようになりましたし、何より、思考する範囲が広がったと同時に方向が定まり、考えやすくなったと言えるかもしれません。
僕と同じように、もしこのような型を知っていて実践できるようになれば、今よりも複数の視点から分析ができ、より深い思考と配慮に富んだ資料をつくる準備ができるはずです。僕自身もう少し早く理解できていればという後悔もあるので、知っていて損はないはずです。
ただし、最後に改めて注意です。ここまでのポイントや意識はあくまで型でしかありませんし、これに倣えば必ず良いものになるわけでもありません。しかしながら、きっと資料をつくる上で、もしくは自身の考えを整理する上で役に立つ知見になるでしょう。最後にもう一度ポイントをおさらいします。
☑︎ Point 1. 企画書のトンマナ Simple & Bold
☑︎ Point 2. 根拠と提案
☑︎ Point 3. 一人歩きする資料
☑︎ Point 4. 型(フレームワーク)
これらを上手く活用し資料を『デザイン』できるかは、あなた次第です。僕もまた先輩から注意の赤字が入らないよう、精進したいと思います。