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なぜ中国ではライブコマースが熱いのか? 人気の訳を大解剖

2020年ライブコマースは中国のEC市場で爆発的に成長しました。 KOL(中国版インフルエンサー)から、俳優、県長(市町村のトップ)、大企業のCEOまでMCとして参加し、物が売れに売れ大きな盛り上がりを見せています。
販売する商品は、化粧品や食品、なんと車や不動産そしてロケットまで!EC市場を覆すあらゆるものが驚くほど売れています。
中国の成熟したECとSNSが合体し、またコロナ禍がもたらすオンラインでの購買への急成長もあって2020年は約1,5兆円の市場規模になると予測されています。

なぜ中国人がライブコマースに熱狂するのか?中国人コピーライターの李晶と黄錦が記事をまとめて編集を山入端が担当しました。中国のオンライン市場に興味のある方や、オフライン・オンライン問わず売り方をプランニングしている方に有益な情報となればと思います。

なぜ中国人はライブコマースに熱狂するのか?

グランドデザイン上海のメンバーに聞いてみました。
Aさん:XXさん(MC)だから信じる。きっと良いものを選んでくれるから。
Bさん:ライブコマースが市場で一番安い値段!このチャンスを見逃したら損だよ〜。
Cさん:この商品について、MCは誰よりもよく知っているし、面白く説明してくれる!
Dさん:いつも私たちのことを考えてくれる、MCは私たちの見方。

回答を見てみるとライブコマースの体験というより、ライブコマースにでているMCについての評価が目立ちます。この記事を読んでいる多くの人はテレビ通販がオンラインに移行したことでモバイルからの視聴や参加型だったり、決済までのシームレスな体験が人気になっていると思っている人がほとんだと思います。でも実際はMCの影響が大きいようです。では、MCとは一体どのような事をしているのか説明したいと思います。

ライブコマースに出てくるのMCの特徴とは?

・KOL(中国版インフルエンサー)がMCをしている
・MCは、実際に取り扱う商品を自ら調べて厳選する
・MCは、メーカー側ではなく顧客側にたつ
・MCは、一人ではなく、バックに複数の専門家チームがついている。
・MCは、顧客から「自家人(身内)」のような存在で、深い信頼関係で結ばれている
KOLからMCは生まれ、そしてMCは取り扱う商品のカテゴリーを熟知している。そしてMCを支えるのが専門チームです。顧客の為に商品をリコメンドして販売する姿勢は誠実さで溢れていて顧客(ファン)に信頼されている。それがMCです。

KOLからMCが誕生する流れ

KOLからMCになっていく流れをまとめました。

□ 90年代〜00年代
ブランド⇄顧客という消費関係であり、不良品や複製品や偽物などの商品に溢れ、信頼関係に欠けている時代

□ 2005年〜現在

ブランド⇄ KOL⇄顧客という関係に発展
KOLは「この商品をよく知っている、市場を熟知したプロの顧客」として、専門的な意見を発言することで、良いものを推薦してくれるという信頼関係を顧客との間で築きました。

□ 2016年〜現在
ライブコマースが誕生し、KOLはMCとして起用され現在に至ります。

MCと専門チーム、ブランド、顧客のそれぞれの関係にについて

それぞれの相互関係についてまとめました。

① MCと専門家チーム
MCのために、商品についての専門知識を持ちサービスを提供する
販売前▶︎商品のコストを調べたり、良いものの厳選に協力したりする
販売中▶︎予定販売数と在庫数の状況を把握し、支払った商品がちゃんと顧客の手元に届くように管理する
販売後▶︎商品にもしライブ販売時の紹介と違ったり問題発生した場合、その賠償などのアフターケアも提供する

② MCとブランド
いろんなものをMC自ら試し、その中から良いものを厳選する。当該商品の価格を把握し、メーカーの利益を確保したうえで、顧客のために最大限な得な値段をメーカーと交渉する

③ MCと顧客
MC自身が商品を熟知した顧客でもあり、自ら厳選した良いものを提供する。
そして、メーカーから獲得した一番安い値段で提供する
MCは、それぞれ個性的なキャラを持っており、自虐ネタを披露しながらも、自分が大好きだったりして、まるで家族のような親友のような距離感で商品を紹介します。
1番の特徴は顧客のために一生懸命であること。自分に妥協せず、誠実に、本当の良いものを選別し最良の値段設定のために一生懸命頑張ってくれています。その頑張る姿勢を見てみんな感動し支持するのです。

プレゼン力といったMCのみの領域にとどまらず、リコメンドからアフターケアまで担っており、顧客と信頼のエンゲージで結ばれているのがライブコマースのMCです。

ライブコマース支持を得ているMCを紹介

中国でトップのMCを紹介します。

ライブコマースとテレビ通販の違いとは?

ライブコマースはテレビ通販に似ていますが、違うものです。相違点は以下です。

  • *ここでいうテレビ通販は、中国のテレビ通販の一般的なイメージです

①モバイルがあればどこでも見れる
テレビ通贩の媒体はテレビのみ。ライブコマースの放送網はWeb。ネット環境さえあれば、誰でもどこでも見れる

②テレビより視聴する年齢層が広い
テレビ通贩はネット通販に馴染みが薄い高年齢層が多い。一方ライブコマースは若者、特に日頃からネット通販を使用している女性たち。

③番組に参加でき、コミュニケーションがとれる
テレビ通贩はメーカー側からの訴求を一方的に勧める(印象がある)、ライブコマースは質問を随時受け付けて、即座に答えられる。参加でき双方向的。服の試着や、食品の試食の際には踏み込んで質問できる。

大きな違いは、顧客が放送中、直接質問し参加できるオンラインの特性を活かした体験。更に、リアルタイムでの販売数が数字で可視化される事で心理的に購買の意欲が刺激されることだと思います。特筆すべきは、MCによって商品の売り方が根本的に異なりそれぞれ一つのエンターテイメントとして成立している事です。

グランドデザイン上海でパッケージデザインした商品もライブコマースに登場!

グランドデザインの手がけたパッケージもライブコマースに登場しています。実際いくら売れたのか紹介します。

高級オリーブオイル Olivoila 2本セット
原价 216元(3,400円)
折后价 165元(2,585円)
2分間で16,000箱/32,000本

伊利ポケットチーズ
原价 114元(1,785円)4種類セット
折后价 59.8元(936.8円)
2分間で40,000個

これから考えられる動向

信頼関係に基づいたライブコマースでは、
①良くない商品はどんどん淘汰されていく。
②メーカー側の一方的な利益獲得はなくなり、顧客(ファン)・MC・専門機構・メーカーという四方の利益のバランスが取れる『四方良し』の新構造が確立されていく
③信頼関係が崩れたら、自分のビジネスは終わるということをMCは理解しています。販売〜消費において信頼関係が何より大事になる時代になってくる。
④法律によって消費信用体系を補強していく。

日本にもライブコマース上陸するか?

これまで、中国でのライブコマースとMCについてまとめてきました。では日本にもライブコマースは上陸るのか?考えてみたいと思います。

そもそも日本はブランドを信頼している
[KOLからMCが誕生する流れ]でも出てきたように、中国では不良品や複製品や偽物などの商品に溢れ、信頼関係に欠けている時代がありました。こういった背景があって今のMCの誠実さがライブコマースでは盛り上がりを見せていると考えらます。日本でライブコマースが中国のように大きいビジネスになるか?考えた時に日本には、ある程度ブランドの誠実さに基づいた信頼関係が築けていると思うので中国と全く同じ状態のライブコマースの上陸はないだろうと予測します。

日本のインフルエンサーはモノ作り思考?
KOLがブランドを顧客にリコメンドしてた時代をKOL1.0としたとします。日本にもKOL1.0の時代は確かにありました。というより、インフルエンサーが注目を浴びた時はリコメンドがメインだったような気がします。時代は進み今の日本のインフルエンサーは自分のコンテンツを作っています。
中国ではKOLがMCとなり新しいビジネスモデルを確立したのに対して、日本ではオリジナルの企画を追求したコンテンツがメインになりつつあります。日中のKOLはコンテンツ作りと販売のプロ化(MC)に分かれました。これがKOL2.0だと考えています。なので日本のKOLがMCになって中国のようなビジネスモデルを確立するのも考えにくい流れかと思います。

考えられる予測
少し話は変わりますが、このコロナ禍で働き方の選択肢が増えてそして副業の拡大が起きていると言われています。また組織で働いていた人が個人事業となり個々の事業者が集合し組織のような業態になるギルド化するとも予測もされています。
日本におけるライブコマースは、中国のカリスマ的なMC&チームの出現というより、各専門の個人が集まってできた組織がライブコマースを盛り上げていくような気がしています。そんな個人事業のチームがライブコマースを賑わすのでは?と思います。

日本には、8年以内に訪れる?
Alipayは「Barcode Pay」を開始したのが2011年。日本のキャッシュレスが始まったのは2019年。この8年という時間を考えた時に8年以内にライブコマースが中国から上陸するか、もしくは日本市場にマッチした形で新たに開発されるかもしれません。かつての中国も、今の日本にみられるようなキャッシュレス決済サービスが乱立されていて、生き残ったサービスに絞られてからライブコマースのプラットフォームができたように、日本も同じ系譜を辿ってプラットフォームが確立されると推測できます。または、GAFAのいずれかが加速させる可能性もあります。キャッシュレス決済サービスの絞り込みが始まった段階からライブコマースプラットフォームも加速されると思います。

加速するオンラインビジネスの中で今の中国のライブコマース市場は大きなヒントになると思うし、将来の為に今できる準備もあるかもしれません。今後の動向を追いながらグランドデザインとして何を提供できるか考えていきたいと思います。

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