Overview
日本の独立行政法人国際協力機構JICA(Japan International Cooperation Agency)。世界の困窮な状況を軽減するべく開発途上国に対する支援や技術協力、開発資金援助を行う日本政府の組織。1974年に発足し、40年弱の歴史があるが10~20歳代といった若年層への認知が弱い。 Commercialを制作し、TVやWeb、SNSなどのメディアを活用し、JICAの活動を広告し、認知向上につなげる。
JICA(独立行政法人国際協力機構)は、日本政府が設立した開発援助機関として、1974年の設立以来、世界中の開発途上国に対して支援・技術協力・緊急援助を行ってきた。その活動範囲は水資源、保健医療、災害支援、ジェンダーなど多岐にわたり、社会インフラの形成や人命の支援に大きく貢献している。
しかし、日本国内、特に10~20代の若年層には、その存在すら知られていないのが現実。「JICAって何してるの?」「ボランティア団体?」「ODAって聞いたことあるけど…」こうした“認知の空白”を埋めるために立ち上がったのが、今回の若年層向けCommercial制作プロジェクトだった。
JICAは非営利機関であるため、広告予算に大きな余裕がない。CM制作において一般的な手法(著名人起用、海外ロケ、高品質VFXなど)を使うことは難しい。その制約を逆手に取り、企画の軸を「人と手で描く」=ホワイトボードアートで伝えるビジュアル戦略に定めた。これにより、低コストながらも温かみと手ざわりのある演出が実現された。
企画の中心には、「モノクロからカラーへ」という変化の視覚的比喩が置かれた。
・ 水資源問題
・ 母子保健問題
・ 国際緊急援助
・ ジェンダー平等
この4つの代表的課題について、JICAの支援によって変化していく様子をモノクロ→カラーで描写。Before=白黒で描かれた困窮の現場、After=支援により彩られる未来。この表現により、JICAの活動は「遠い世界の話」ではなく、目に見える“変化”として認識できるものとなった。
今回のコアターゲットは、JICAを「知らない」10~20代の若者。彼らに届く媒体として、
・ Instagram・Twitter・YouTube等のSNS
・ ショートバージョン動画による情報分割
・ 拡散性を狙った親しみやすいハッシュタグ活用
といった、プラットフォームに合わせたマルチデバイス設計を採用。若者が日常的に使っている場所に「さりげなく、だけど印象的に」登場する工夫がなされた。
このプロジェクトでは、ただ動画を作るだけでなく、コンテンツ制作そのものを「国際協力への参加」に変える設計が取られた。美大生57名によるホワイトボードアートの手描き制作。
合計8日間にわたり行われたこの作業は、若者自身がJICAの活動を知り、可視化するプロセスでもあった。ここには、「参加者自身がJICAの伝え手になる」という構造が組み込まれていた。
本プロジェクトの短期的目標は、JICAとその活動への認知向上。SNSでの動画再生回数は累計3万回以上、そこからのフォロワー増加やシェアなど、着実な反応が得られた。
しかし、それ以上に重要だったのは、「将来、国際協力に関わってみたい」という関心を持つ若者を少しでも増やすこと。この動画を起点に、JICAのボランティア制度や、開発協力キャリアへの興味が芽生えれば、広告は啓蒙以上の意味を持つ。
このプロジェクトは、「知らない」を「知ってみたい」に変えることを目的とした、ソーシャル・ブランディングの試みである。限られた予算でも、想いと構造さえあれば、若者に語りかけ、未来への関心を育てる広告は作れる。そしてその入口は、「描かれた世界」だった。描かれたモノクロの世界が、誰かの手によって色づいていくように、誰かの行動で、世界も少しずつ変わっていく。それが、JICAという存在の伝えたかった本質である。
Date | 2019 |
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Industry | International Development |
Location | Global |
Grand design