Overview
2012〜2017年、Grand Design ShanghaiおよびHong Kongは、UNIQLOの中国・香港市場におけるブランディングを支援。グローバル資産を活かしつつ、各都市の文化や生活感覚に合わせた“生活者視点”の表現を徹底した。店舗オープンや旧正月などのプロモーションでは、コピー、ビジュアル、ツールすべてでUNIQLOらしさを保ちながらも、地域に根ざした展開を実現。特に“Lifewear”の中国語再定義では、単なる翻訳でなく生活に響く表現を構築。多拠点連携による即応力と統制力を両立させ、UNIQLOのローカル適応とグローバル一貫性の両立を支えた。
2012年から2017年にかけて、Grand Design ShanghaiおよびHong Kongは、UNIQLOのグレーターチャイナ地域(中国・香港)でのブランドコミュニケーションを支援してきた。ユニクロの強みである“グローバル一貫性”と、マーケットごとの“ローカル適応”を両立させるため、日常的に膨大な広告物やプロモーションツールをデザイン・翻訳・展開する必要があった。
プロジェクトの最大の課題は、「UNIQLOらしさ(=ビジュアルアイデンティティと哲学)を保持したまま、都市ごとに異なる中国の市場や文化にフィットさせること」。その両立をどう果たすかが、私たちのミッションだった。
中国市場は一枚岩ではない。北京、上海、広州、成都……都市ごとに気候・文化・消費意識・ライフスタイルが大きく異なる。UNIQLOのようなグローバルブランドが、各地域で真に共感されるためには、単なる翻訳やアダプテーションではなく、「生活感覚」への理解と表現が求められた。Grand Designは、現地スタッフを含む専属チームを編成し、ローカルの声を組み込んだ“生活者視点の表現”を徹底した。
UNIQLOには、グローバルで統一された商品ビジュアルやタグライン(例:Lifewear)が存在する。これらをそのまま輸入しても響かないのが、地域性の強い中華圏。私たちは、英語・日本語原文の意図を丁寧に咀嚼したうえで、中国語の言語感覚、社会の文脈、行動心理にフィットさせたローカライズを徹底した。特にLifewearの中国語ステートメントは、単なる訳ではなく、「UNIQLOとは何か」を中国語で再定義するプロジェクトであった。
UNIQLOの中国展開は年々拡大し、新店舗のオープン、季節ごとの感謝祭・旧正月キャンペーン、セールスプロモーションなど案件の数もスピードも膨大だった。しかし、それらすべてにおいて“UNIQLOらしさ”を一貫させる必要がある。私たちは、各拠点のプロジェクトチームとディレクター陣を中心に、
・デザインガイドラインの策定
・表現トーンの統一
・メディア別最適化(屋外広告・ECバナー・店頭POPなど)
を独自に運用し、多拠点・多ツールでも崩れないブランド構築を実現した。
マーケティングの中でもっとも“文化の壁”が立ちはだかるのがコピーライティングだ。私たちは、日本語・英語・中国語のニュアンスを横断的に理解できるチームを社内で育成・配置。中心を担ったのは、Grand Design Shanghai中心メンバー。彼らは、UNIQLOの思想を深く理解し、同時に中国文化に根差した言葉の「温度」「距離感」「生活接続感」を意識しながら、“ローカルに生きるグローバルメッセージ”をつくり続けた。
2016年には、インドネシア市場のUNIQLOクリエイティブチームとも連携。グローバルとローカルの間で、「ブランドの精神を保ちつつも、マーケットごとの表現に変換する」ためのナレッジとフローの共有を行った。Grand Design Shanghai・Hong Kongは、中国・香港という巨大かつ変化の激しい市場で、現場感覚に根ざした“即応力”と、ブランド基準に沿った“統制力”を両立したチームとして、UNIQLOのパートナーを担い続けた。
UNIQLOが掲げる“Lifewear”というタグラインは、単なる商品分類ではなく哲学の表明である。それを中国語でどう表現し、中国の生活者にどう届けるか。それが、私たちのこのプロジェクトにおける、最も長く、最も繊細な取り組みだった。コピー、デザイン、ツール設計、キャンペーン展開のすべてにおいて、“Lifewear”を言葉ではなく日常体験として翻訳する。それが、私たちが果たしたブランディングの役割である。
Date | 2012-2017 |
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Industry | Retail |
Location | China |