Overview
ピアニッシモファミリーのLEP(リミテッドエディションパッケージ)。JTが、新年やクリスマスなど季節の折り目に登場する特別パッケージ版である。ピアニッシモファミリーでは2010年のクリスマスバージョンに続き、2012年春に限定販売された。8アイテム全種そろっての販売は今回が初めて。
JTが季節の節目に展開する特別仕様のパッケージ「LEP(リミテッドエディションパッケージ)」。その2012年春版では、ピアニッシモファミリーの8つの銘柄すべてが同時に限定仕様へとドレスアップされることが決定された。だが、ピアニッシモファミリーは単なる「派生商品」ではなく、それぞれに独立したキャラクターと世界観をもつ8ブランドで構成されている。その個性を保ったまま、“限定版としての一体感”をどう作るか?この難題が、プロジェクトの出発点だった。
私たちが着目したのは、JT=Japan Tobacco=“日本たばこ産業株式会社”という事実そのもの。「ならば、“日本発”を強調した限定版があってもよいのでは?」この発想をもとに導き出されたのが、“和柄”という共通コンセプト。これにより、バラバラな個性を持つ8ブランドを、
・ 季節感(春)
・ 限定感
・ JTのアイデンティティ
という3つの観点から、緩やかに束ねる軸を設計した。
ブランド統一の鍵は、“世界観の整合”と“限定版の特別感”を同時に成立させること。具体的には、
・ 各レギュラーパッケージのデザイン要素を必ず1点取り入れる
・ そこに、桜・月・牡丹などの和柄モチーフを“個性ごとに最適化して”組み合わせる
・ 色彩・構図・トーンすべてを銘柄ごとのキャラ設定に基づいて調整
つまり、“同じ和柄”というよりは、「そのキャラクターが選びそうな和柄であること」が重要だった。
デザイン開発では、視覚情報だけでなく、持ち主の人格像(ペルソナ)を先に設定。
・ アーバンでクールな女性
・ 可憐で可愛らしい感性の持ち主
・ 大人びた知性と品格を感じさせる人物
など、各銘柄にふさわしい“手にする人のキャラ”を想定し、その人が持ちたくなる花柄や質感を追求した。このプロセスが、“ただの美しい和柄”ではなく、“似合う和柄”を導き出す鍵となった。
最終提案では、銘柄ごとに4案、合計32案を提出。どの案も、和紙の質感表現、箔押し、パールインキなど、高度な印刷加工技術を前提とするデザインで構成していた。そのため、開発段階からJTの印刷技術スタッフを交えて検討を進行。“見た目の美しさ”と“製造の実現性”を両立させる、実務と創造の交差点での調整が不可欠だった。
このシリーズは国内外でも高い評価を受け、世界的なパッケージデザインアワード「Pentawards 2012」にてBronze(銅賞)を受賞。和の文脈と繊細な意匠性、プロダクトとパーソナリティの一致性が、国際的にも評価された瞬間だった。
今回のLEPは、単なる「記念パッケージ」ではない。それは、既存銘柄の“本質”をより深く引き出し、それぞれの個性を“季節”と“文化”で包み直すという、繊細なブランディングの再解釈だった。一見バラバラに見える8銘柄が、「和」というフィルターを通じてひとつのストーリーになる。その瞬間、“集めたくなる限定感”と、“持っていたい愛着感”が両立するデザインが完成した。
Grand design