Projects

Overview

『せかいむすび』は、おむすびを通じて日本文化と世界の多様な文化を結びつける国際交流プロジェクトである。日本のお米と各国の具材を組み合わせた「グローバルおむすび」により、食卓で文化を翻訳し対話を生むことを目指す。ロゴは“むすぶ手”という動作に着目し、体温や思いやりが伝わるデザインに。東京オリンピックを契機に、食を通じた日常的な国際文化のレガシーを創出する挑戦となった。

Creative idea

「おにぎり」で世界とむすばれる未来をつくる

世界中の人々が東京オリンピックで集うその瞬間、日本のソウルフードであるおむすびを媒介に、“文化の交流”と“味の翻訳”ができたらどんなに素敵だろう?そうした発想から生まれたのが、東の食の会が運営する『せかいむすび』プロジェクト。お米という日本の主食と、各国の具材を組み合わせた「グローバルおむすび」を通して、

・ 日本文化を紹介し
・ 各国の文化を尊重し
・ 食による対話の場をつくる

ことを目指した、未来志向の国際文化発信事業である。

|1|『せかいむすび』という構想──おむすびを世界のプラットフォームに

このプロジェクトの中核には、「おむすびの懐の深さ」がある。米(日本)+具材(世界各国)というシンプルかつ自由なフォーマットによって、世界中の文化や素材を包み込む器になりうるのがおむすびである。『せかいむすび』はこの構造を活かし、「誰もが参加できる日本文化の翻訳装置」として、食卓に小さな国際交流を生み出すことを意図している。このビジョンは、内閣官房が認定する文化プログラム『Beyond 2020』にも採択され、オリンピックのレガシー創出にも位置づけられている。

|2| 記号ではなく「動作」から生まれるマークの構想

通常、おにぎりのロゴといえば三角形をベースとした記号が多数ある。しかし『せかいむすび』は、あくまで“むすび”のプロジェクトであり、重要なのは「形」よりも「行為」=“むすぶ手”。そこで私たちは、完成された三角形のおむすびを描くのではなく、具と米を結ぶ「手」の所作をビジュアル化することに挑戦した。

|3| 温もりのある“手”の表現へ──ビジュアル決定の経緯

数々の試作を経てたどり着いたのは、記号的でミニマルな手ではなく“人の体温”や“生活のリアリティ”が感じられる手、つまり、文化や国籍を超えて共感を呼ぶ“誰かが誰かのために作る手”のイメージだった。デザイン的な整合性よりも、“味わい”や“思いやり”がにじむ線の質感を重視。その結果、ロゴマークには世界の具材を柔らかく包み、むすぶ手が採用された。

|4| 文字デザインにも“和”と“食”の品格を

ロゴの和文書体「せかいむすび」には、

・ 和食文化の上品さ
・ おむすびのやさしさ
・ 食卓を囲むあたたかさ

が感じられるよう、骨格の柔らかさと凛とした品のバランスが設計された。可読性や媒体対応に配慮しつつ、「手仕事」と「日本らしさ」が宿るフォルムを持つ文字が選ばれた。

|5| 未来に残す“むすび”の文化レガシーへ

『せかいむすび』は単なるフードイベントではない。それは、食を通じた多文化共生の実験であり、小さな“むすび”を通して世界とつながる文化デザインの試みである。世界中の人が自国の具材でむすんだおむすびを東京で食べ、「帰国後それをまた“再現”し、他国の文化を語り継ぐ」という文化的エコーが生まれる構造になっている。この思想は、「ポスト2020のレガシー」として“日常に残る国際交流”を創出する提案でもある。

| まとめ | むすびは、言葉を超えた“文化の通訳〟

『せかいむすび』は、「手でむすぶ」「口にする」「記憶に残る」という三重の“体験”によって、世界中の文化と人をつなげるプロジェクトである。そのビジュアルも、記号ではなく、温度と物語を持った“手”と“文字”によって構成された。食べること、贈ること、つくること。そこに込められる想いの強さが、文化を未来へむすぶ力になっていく。

About

Date 2019
Industry Retail
Location Japan
URL https://sekai-musubi.com/

Information

Grand design

Katsunori Nishi
Creative Director
Nanae Iwatastu
Creative Director