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Overview

knitido+ (ニッティドプラス) は“5本指ソックス”のブランドとして、5本指ソックスのパイオニアとして業界をリードし続けているニッティド株式会社と、レッグウエアデザイナーとして20年間第一線で活躍してきた石井恵美子のプロデュースによって誕生したピラティスに特化した5本指ソックスのブランドです。グランドデザインは、ブランドの立ち上げの段階から開発アドバイザーとして、ステートメントの開発、ブランドロゴの開発、パッケージデザイン、ブランドサイトに至るまで一気通貫して担当しました。

Creative idea

“ただの5本指ソックス”では伝わらない。

「5本指ソックス」というカテゴリは、もはやニッチな存在ではなく、多様なブランドが入り乱れる成熟市場である。その中で、「ピラティスに特化した5本指ソックス」という新たなポジショニングで誕生したのが knitido+(ニッティドプラス)。
企画の中心には、

・ 5本指ソックスのパイオニア・ニッティド株式会社の技術
・ レッグウェアデザイナー・石井恵美子氏の20年の感性

という強力な組み合わせがあったが、課題は明確だった。「どうすれば、“このブランドらしさ”を言葉とビジュアルで伝えられるのか?」ブランド設計、ステートメント、ロゴ、パッケージ、Webサイトに至るまで、「本質が伝わる一貫したブランド体験」が必要とされていた。

|1| ブランドの“核”を共有するための、開発プロセス設計

knitido+の立ち上げにおいて、まずグランドデザインが重視したのは、“対話”による共通理解の形成である。週1回の定例ミーティングでは、

・ ピラティスにおける足指の役割
・ 製造・技術面での工夫
・ 使用者が求めている「身体感覚」
・ ブランドとして目指す世界観

などをブランド側と制作側が丁寧にすり合わせ、制作の前に思想をつくるフェーズに時間をかけた。この土壌があって初めて、“ただの機能製品”ではなく、**“哲学を持った商品”**としての構造が育った。

|2|「足指=本来の機能美」を言語化するステートメント開発

ピラティスにおいて足指は、単なる体の一部ではなく、全身の安定・動き・重心を整える中核である。この思想に共鳴しながら、開発されたブランドステートメントは、次のような問いかけから始まった:「あなたの足指は、本来の力を取り戻していますか?」そこから導き出されたのは、

・ 足本来の機能に戻ること
・ 自然な動きを支えること
・ 自分の体を“使いこなす”感覚を取り戻すこと

といった、“身体の原点に戻る”ブランドメッセージ。機能訴求だけではない、身体への意識そのものを変える体験価値が、ステートメントに込められた。





|3|「n=指」──本質と象徴性を両立したロゴデザイン

ロゴデザインでは、“足指そのもの”を象徴するモチーフを探る中で、「生まれたばかりの赤ちゃんの足指」というコンセプトに辿り着いた。これは、

・ 無垢な機能性
・ 自然体の動き
・ 自己再生の象徴

を表し、同時に「n=指(ナンバー/natural/naked)」という記号的な意味も持たせることで、抽象性と身体性を両立するロゴが完成。タイポグラフィの形状、文字間、囲みの余白までが、**呼吸感と身体との“間”**を意識した設計になっている。

|4| パッケージ・ブランドサイトに宿る“身体との会話〟

パッケージとブランドサイトにおいても、単に製品情報を並べるのではなく、「履いたときに、あなたの身体に何が起きるか」という体験ベースの構成が採用された。

・ パッケージは、足の機能説明を視覚化しながらもミニマルに
・ サイトは写真と余白を活かし、空気感のあるナビゲーション設計に
・ 文字や色も“動き”“安定”“内側の感覚”といったテーマで構成

ブランドとユーザーの接点すべてに、プロダクト=身体哲学の伝達装置としての美学が通底している。

|5| プロダクトアウトから、“思想アウト”のブランドへ

多くのスポーツソックスが、機能性や素材アピールに終始する中で、knitido+は、“身体の気づき”を届けるブランドとして差異化されている。これは、

・「体にいい」ではなく、「自分の身体と会話する」
・「支える」ではなく、「使いこなす」

という、ユーザーの“意識”を変えるブランドであるという方向性である。まさに、プロダクトアウトではなく、思想から出発するブランディングの実践例となった。

| まとめ | 本質を掴み、すべての接点に宿す。

knitido+の立ち上げは、技術 × 感性 × 身体哲学 × デザイン言語を融合させ、0→1の段階から“思想あるブランド”を形にしたプロジェクトである。私たちは、ブランドとは「商品名」ではなく、「身体と心を結ぶ問いかけ」であることを改めて実感した。足指からはじまる、この問いの一歩は、今も静かに、ユーザーの中に広がっている。

About

Date 2018
Industry Retail
Location Global

Information

Grand design

Nishi Katsunori
Creative Director
Yu Yamanoha
Art Director / Designer
Yuki Fujiwara
Graphic Designer