Overview
精密光学メーカー・日東光学は、世界のカメラや宇宙機関にレンズを供給する“隠れた名門”でありながら、長くその価値が正しく伝わっていなかった。海外からの引き合いが加速する中、Webサイトの刷新を機に、同社はブランドの再定義へと舵を切った。本プロジェクトでは、高精度レンズを日東のKey Productとし、企業の技術力・哲学・誇りを視覚と言語で可視化。映像中心のWeb設計、各種ツールの統一、社員意識の変革を通じて、「無名の技術集団」から「世界に誇る光学ブランド」への進化を遂げた。製品の魅力を磨き、正しく伝えることでBtoBブランドの力を証明した好例である。
BtoB領域においては、圧倒的な技術力や実績があっても、その価値が社外に正しく伝わらないまま埋もれてしまうケースが少なくない。長野県諏訪市に本社を構える日東光学も、まさにそうした課題を抱えていた。
同社は国内外のカメラメーカーや宇宙関連機関にレンズを提供する精密光学のエキスパートでありながら、その存在は長らく“無名の名門”として語られてきた。だが近年、海外からの引き合いが加速する中で、日東光学は「ブランド」という視点から自らを見つめ直すフェーズに入った。
本プロジェクトは、Webサイトの刷新を起点に、同社の中核となるKey Product=高精度レンズの価値を可視化し、企業全体のブランドを再定義する取り組みである。それは単なるデザインの更新ではなく、“企業の本質を語る一本”を磨き上げることで、国内外の評価と社員の誇りを同時に変えたBtoBブランディングの好例となった。
日東光学は、長野県諏訪市に本社を構えるBtoB専門の精密光学メーカー。一般消費者にはなじみが薄いが、日本の大手カメラブランドを支える重要なパートナー企業であり、世界的にも高い信頼を誇っている。アクションカメラ「GoPro」や医療機器、監視カメラ、さらには産業用途に至るまで、あらゆる“レンズを必要とする現場”で同社の技術が活用されている。
日東光学の製品は、民間用途だけにとどまらない。
・日本の気象衛星「ひまわり」
・NASAによる月面探査機
といった国家規模のプロジェクトにも採用されるレベルの品質と信頼性を誇っており、同社のレンズは世界を撮影する『目』として機能している。それにもかかわらず、同社のブランド力や認知度が追いついていないことは、企業価値の可視化という観点から大きな課題となっていた。
国内外の数多くの成功実績を背景に、欧州から国家レベルのプロジェクト依頼が舞い込むようになった。
その流れの中で、会長はついに決断する:
「我々も、欧米のレンズメーカーと肩を並べるブランドを築くべきだ」
当初はWebサイトリニューアルの相談として始まったプロジェクトだったが、既存素材やデザインでは技術力を正しく伝えきれないという判断に至り、企業全体のリブランディングプロジェクトへと発展した。
ブランドの印象は、視覚体験に大きく左右される。静止画では伝えきれない日東光学の精密な技術と質感を可視化するために、すべての撮影素材をハイビジョン映像で再構築。Webサイトも静止画ではなく、動的なビジュアル中心の構成とし、製品の“息づかい”まで感じられるようなデザイン演出を施した。その結果、「無名の技術者集団」から「世界に誇る技術ブランド」へと印象が一変した。
リブランディングはWebだけにとどまらなかった。
・ 会社案内
・ 名刺
・ 提案書フォルダ
・ 英語版プレゼン資料フォーマット
あらゆるタッチポイントのビジュアルトーンを再設計。この一貫性が社内にも大きな意識変革をもたらした。かつては「実力はあるが田舎の小さな会社」という自己評価だった社員たちが、今では「日本を代表する光学企業の一員として、世界と対等に仕事をしている」という誇りを持ち始めている。
このプロジェクトは、日東光学の技術の核である高精度レンズ=Key Productを起点に、企業全体の価値を再定義した好例である。製品そのものが持つ魅力と信頼性を、ブランディングという視点から磨き上げることで、
・ 社外へのブランド価値の伝達
・ 社内の誇りと意識変革
・ グローバル市場における競争力の強化
といったBtoB企業におけるブランディングの三位一体の成果を実現した。「つくる力」に加え、「伝える力」を手に入れた日東光学の次なる展開は、B to Bブランディングの1つの好例となる。
Date | 2016 |
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Industry | Precision equipment |
Location | Japan |
URL | www.nittohkogaku.co.jp/brand/ |
Grand design