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Overview

福島・いわきの農園「ワンダーファーム」が手がけたトマトビール「ワンダーゴールデンアイ」は、震災後の農業再生と信頼回復を象徴する“Key Product”。007『GoldenEye』をもじった記憶に残るネーミングや、赤と金の上品な配色、無駄を削ぎ落としたパッケージデザインにより、「語れる一本」としての価値を体現。東の食の会と連携し、「食で福島を再生する」というストーリーを商品そのものに込めた、希望の詰まったクラフトビールである。

Wonder GOLDEN EYE

Creative idea

“語れる一本”が、土地の希望を運ぶ——Key Productが果たすべき役割

2011年の東日本大震災で、福島の農業は大きな打撃を受けた。それから10年以上が経った今も、地域の農家たちは「風評」と「不安」の中で、食の価値を問い直し、再び信頼を積み上げようとしている。福島・いわきの農園「ワンダーファーム」が手がけたトマトビール「ワンダーゴールデンアイ」は、そんな復興の道のりの中で生まれたプロダクトである。

この一本には、単なる商品以上の意味がある。地元の再生の象徴であり、福島の農業がもう一度“うまい”で語られるための挑戦である。そしてこの挑戦は、東日本の食産業再生を目指す『東の食の会』が推進するプロジェクトの一環として展開された。本プロジェクトの核心は、広告やプロモーションではなく、「Key Productとしての一本で、ブランドと土地の未来を語る」ことにあると認識した。

|1| Key Productとしての“ワンダーゴールデンアイ”が担うブランドの使命

Key Productとは、ブランドの精神と世界観を一秒で伝える“顔”であり、土地の記憶を繋ぐ象徴でもある。このトマトビールは、

・ ワンダーファームが誇るサンシャイントマトの魅力
・ クラフトビールという新たなカテゴリへの挑戦
・ そして「食で福島を再生する」という想い

をすべて内包した、食の再生と希望を具現化した一本である。

|2| ネーミングに込めたユーモアと記憶の設計──『GoldenEye』からの引用

「ワンダーゴールデンアイ」という名前は、007シリーズの名作『GoldenEye』をもじった、記憶に残るネーミングである。一見ふざけているようで、その実:

・ Golden=トマトの黄金色と価値
・ Eye=注目される存在に
・ Wonder=農園のブランド名と、驚き・希望の象徴

という意味が重ねられている。“ふざけているようにみえ、考えさせられる”——これはまさに福島の今を語るにふさわしい、ユーモアと真剣さが共存するブランドの語り口である。

|3| デザインに込めた“土地の品格”と“クラフトの潔さ”

本プロダクトでは、奇抜なデザインよりも、福島の真面目なものづくりを伝える構成が求められた。

・ トマトの赤とビールの金が織りなす信頼感あるカラーバランス
・ 手仕事感を感じさせるラベルと品格ある書体
・ 無駄な装飾を避け、味で勝負する潔さを映す余白設計

パッケージそのものが、「これは語るに値する一本だ」と静かに主張している。

|4| 奇をてらわず、印象に残るパッケージデザイン

市場にはグラフィカルなクラフトビールが溢れているが、「見た目は面白いけれど手に取られない」商品も多い。私たちは“黄金の目”という印象的な名前を軸にしながらも、

・ 赤と金のコントラストでトマトの鮮烈さとプレミアム感を演出
・ 素材への信頼感を損なわないレイアウトと余白設計
・ 王道感/クラフト感を引き出すラベル紙の質感と書体の選定

といった要素で、“目立つのにうるさくない”デザインに仕上げた。

|5| 東の食の会と共に挑む、“再信頼”の設計

「ワンダーゴールデンアイ」は、東の食の会が目指す、「おいしさ」と「ストーリー」で地域を再び輝かせる」という思想を体現するプロジェクトでもある。地域の素材を単に使うのではなく、それを微笑まれ、愛され、語られるかたちに昇華する。そこにKey Productとしての価値がある。

| まとめ | 希望の名をもつ一本が、ブランドと土地をつなぐ

「ワンダーゴールデンアイ」は、

・ 福島のトマト農業の再構築
・ 食で土地の物語を届けるブランディング
・ “笑って、味わって、語られる”Key Productとしての使命

をすべて内包する、小さな希望のかたまりだ。007のオマージュを纏いながら、「福島は、うまい。福島は、面白い。」と、パッケージひとつで語りかけるこのプロダクトは、ブランドの未来を照らす、まさに“黄金の目”=GoldenEyeである。

Awards

About

Date 2020.7.31
Industry Retail
Location Japan

Information

Grand design

Katsunori Nishi
Creative Director
Jun Fujiwara
Creative Director
Koji Kitada
Art Director / Designer / Photographer