Projects

Overview

手頃な価格帯の商品が“安っぽく”見えないようにするため、本プロジェクトでは印象による上質感の構築を目指した。中性的で時代に左右されないトーン、余白と静けさを活かした構図、素材感を際立たせる光と陰の使い方により、「価格を意識させない」洗練されたビジュアルを実現。写真を通じて、言葉より早くブランドの品格と世界観を伝え、“安いから”ではなく“暮らしにしっくりくるから選ばれる”体験へとつなげた。

Creative idea

価格では語れない“上質さ”を、ビジュアルでどう表現するか?

手頃な価格帯で展開されるライフスタイルプロダクトは、しばしば“低機能”を連想させるリスクを伴う。しかし、それらの商品が本来持つ魅力や哲学を正しく伝えるためには、価格ではなく“印象”で上質感をつくる設計が必要になる。

本プロジェクトでは、ブランドの世界観をより一層明確に伝えるため、フォトディレクションを通じて「日常に溶け込む上質感」の構築をミッションとした。ユーザーが商品を“安いから選ぶ”のではなく、「自分の暮らしにしっくりくるから、欲しくなる」という心の動きへつなげるためのビジュアル設計が求められていた。

|1| “ニュートラルな上質感”を軸にした世界観設計

ビジュアル表現において意識したのは、中性的かつ時代に左右されにくい世界観。

・ 性別や年齢を問わず受け入れられるデザイン
・ トーンを抑えた配色と素材感の伝わる構図
・ 生活に自然に馴染む“匿名性のある洗練”

ブランドが持つ“誰でも選べる自由さ”と“誰が持っても品良く見える汎用性”を両立するために、装飾ではなく構成と光で魅せる設計思想を基盤とした。

|2| 余白と静けさがつくる“高見え”の空気感

手に取りやすい価格の商品において重要なのは、「安く見せない」ことではなく、「価格のことを意識させない」ビジュアルをつくること。そのために、

・ 被写体の周囲に十分な余白を持たせる構図
・ 色彩のハレーションを抑えた背景設計
・ 商品単体でも絵になる落ち着いた世界観

を徹底し、視線が迷わず、静かに魅力が伝わる写真設計を行った。これにより、“シンプルで落ち着きのある高級感”が自然に伝わるビジュアルに仕上がった。

|3| 光と陰のディテールで“質感を語らせる”

価格帯が低いからこそ、素材の良さやディテールの丁寧さを伝えることが重要になる。そこで重視したのが、「光と陰を使った質感の演出」である。

・ プロダクトの輪郭に沿ったサイド光でフォルムを際立たせ
・ 反射やハイライトのバランスで素材感を明確に伝える
・ 陰影の出方をコントロールし、実際の使用イメージとリンクする立体感を確保

これにより、「なんとなく可愛い」ではなく、「ちゃんと良さそう」という品質感を与えるビジュアルが実現した。

|4| ビジュアルがつくるブランド体験の一貫性

写真は単なる商品の説明ではなく、ブランドに触れる“最初の体験”である。だからこそ、フォトディレクションは以下のような点でブランド体験に直結する:

・ SNS、EC、店舗ビジュアルでの統一された世界観
・ 視覚的に伝わるブランドの温度感と人柄
・ 商品と暮らしの関係を想起させる使用シーンの想定力

ブランドが「何をどう届けたいか」を、言葉より早く、正確に伝える手段としての写真設計がここにある。

| まとめ | 価格を超える“印象価値”は、写真から始まる

このフォトディレクションプロジェクトは、「高価ではないが、高く見える」ではなく、「上質であることを写真で自然に伝える」ことを目指した、ビジュアルブランディングの実践例である。

誰にでも届く価格で、誰にでも似合う洗練を。

その設計の起点は、構図・光・質感・余白を丁寧にコントロールする、“見る人を選ばない上質さ”となります。

About

Date 2024
Industry Retail
Location Japan
URL https://salonia.jp/

Information

Grand design

Minami Yoshimoto
Art Director / Designer
Anne Grützner
Art Director / Designer
Chiaki Fukushima
Designer

Outsourcing

Takashi kenmochi
Photographer
Maiko Akiyama
Prop Stylist
Yuko Nakamura
Fashion Stylist
Minami Shirado
Makeup artist